胆のう・膵臓について
胆のうがんや膵臓がんに代表されるように、胆のうや膵臓の病気は初期の段階では自覚症状に乏しく、気づかないうちに進行している恐れもあります。また、健康診断等の血液検査では、こうした初期の胆のうがんや膵臓がんを発見することは困難です。胆のうがんや膵臓がんは、進行すると根治が難しくなるため、早期発見・治療が重要な病気となります。
胆のうや膵臓の状態を詳しく調べるには、腹部超音波検査が有効です。腹部超音波検査は短時間で終了する上、痛みなどの侵襲もなく気軽に行うことができます。
当院で超音波検査を実施する際には、事前予約も必要なくご来院時にそのまま検査を行うことが可能です。ただし、検査を行う際には検査前5時間以上は絶食していただき、水分補給は水のみで行うようお願いしております。何かご不明な点がある場合には、お気軽に当院までご相談ください。
「胆のう」とはどんな臓器?
胆のうとは、肝臓で作られた胆汁を蓄積する働きを担っている臓器です。胆のうは西洋梨のような形状をしており、肝臓と十二指腸をつなぐ管の途中に存在しています。大きさは10cm×4cm程度で、50〜60mlの胆汁を蓄積することができます。
「膵臓」とはどんな臓器?
膵臓とは、食べた物を消化する膵液を生成して十二指腸に送り出す働きを担っている臓器です。また、血液中の血糖値を調節するホルモンであるインスリンを生成して血中に送り出す働きも担っています。膵臓は胃の後ろあたりに存在し、20cmほどの細長い形状をしています。
どんな症状に気を付けたらいいの?
以下のような症状が現れている場合には、できるだけ早めに当院までご相談ください。
胆のうポリープ
胆のうポリープは発症してもほとんど自覚症状が出ないため、健康診断や人間ドックなどで偶然発見されるケースが多く見られます。胆のうポリープの90%以上はコレステロールが盛り上がってできる良性腫瘍で、その後悪性化する心配はほとんどありません。
ただし、胆のうポリープの中には悪性化するケースもあるほか、初期の胆のうがんが紛れ込んでいるケースもあるため、注意が必要です。特に胆のうポリープのサイズが10mm以上のものや急激に成長しているもの、超音波検査を行っても良性か悪性かの判別が難しいものの場合は、精密検査を行って状態を詳しく調べておくことが大切です。胆のうポリープが発見された場合には、最低年1回は超音波検査を行って経過観察するようにしましょう。
胆のう炎
胆のう炎とは、胆のうが炎症を起こした状態の病気です。放置すると炎症とともに胆のうがむくみを起こして腫れていき、さらに進行すると胆のう壁が壊死していきます。
初期の段階では上腹部の不快感や鈍痛などが生じますが、症状が進行すると右季肋部痛(右側の肋骨の下に生じる痛み)を引き起こし、痛みも次第に激しくなっていきます。
胆管炎
胆管とは、肝臓が分泌した胆汁を十二指腸に運ぶ通り道のことです。何かしらの原因で胆管が感染すると、胆管が炎症を起こす胆管炎を発症します。
主な原因は、胆汁が細菌感染を起こし、かつ胆汁が胆管内に滞留して胆管の圧力が上昇することです。
39℃以上の発熱や右上腹部痛、黄疸などといった症状が見られます。
膵臓がん(膵がん)
膵臓がんは主に膵管に発生し、初期の段階から周囲のリンパ節や肝臓に転移したり、腹膜播種(がんが腹膜に転移すること)を起こす特徴があります。また、膵臓がんは膵管内乳頭粘液性腫瘍や糖尿病が進行して発生したり、別の部位に発生することもあります。
初期の段階では自覚症状に乏しく、進行すると腹痛や背中痛、腹部膨満感、食欲不振、黄疸などを引き起こしますが、中には突然症状が現れることもあります。
主な治療法は、手術や薬物療法、放射線治療、緩和ケアとなります。切除可能な段階では、手術とともに薬物療法、放射線治療を組み合わせた集学的治療を行います。切除が困難な段階では、薬物療法や放射線治療が中心となります。また、緩和ケアのみを行う場合もあります。
急性膵炎
急性膵炎とは、何らかの原因で膵液内の消化酵素が膵臓自体を消化してしまう病気です。主な原因は過度な飲酒や脂分の多い食事などです。食事習慣の乱れによって膵液が多量に分泌されると、膵臓の負担が増大して膵炎を引き起こします。また、胆管から落ちてきた胆石が膵臓の出口を閉塞してしまうこともあります。その他では、脂質異常症や、中には原因が分からないこともあります。一般的に中高年の男性に多く見られる傾向があり、男性の場合は過度な飲酒、女性の場合は胆石が原因であることが多いです。
主な症状は、みぞおちや背中への激しい痛みや発熱、吐き気などになります。また、重症化すると10人に1人が死に至る危険性もあります。
治療には長期入院が必要になり、絶飲食を行った上で膵液の酵素の働きを抑制する薬の点滴などを行います。胆石が原因の場合は、胆石の摘出手術を行います。
急性膵炎の予防は、生活習慣を整えて膵臓の負担を軽減することが第一となります。
慢性膵炎
慢性膵炎とは、膵臓で慢性的な炎症が続くことで膵臓の細胞が徐々に破壊され、膵臓の働きが低下していく病気です。
主な原因は過度な飲酒によるものが過半数で、その他では胆石が原因の場合や、中には原因不明のケースもあります。
主な症状は、上腹部・背中の痛みや腹部膨満感、食欲不振などになり、症状が進行すると消化吸収機能が低下して下痢や体重減少などを引き起こすようになります。また、膵臓からのインスリン分泌量が低下することで、糖尿病を引き起こすこともあります。
治療は、禁酒を中心とした生活習慣の改善が第一となります。膵臓機能が低下している場合には、インスリン注射や消化を促進する消化酵素薬などが適用されます。胆石が原因の場合には、内視鏡によって除去したり、衝撃波で砕いたりします。
膵のう胞
膵のう胞とは、膵臓にできる液体を中に溜めこんだ袋状のものを言います。膵のう胞は、良性腫瘍のものから悪性腫瘍のものまで様々な種類があり、急性膵炎や慢性膵炎による炎症などが原因で形成されます。無症状の場合が多く、健康診断や人間ドックなどで偶然発見されるケースが多く見られますが、腹痛や吐き気などの症状が現れることもあります。また、中にはがんと関連性が高い悪性腫瘍の膵のう胞もあり、その場合には進行とともに食欲不振や体重減少、倦怠感などの全身症状を伴うようになります。