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  • 過敏性腸症候群(IBS)

    過敏性腸症候群(IBS)とは

    過敏性腸症候群(IBS)とは過敏性腸症候群(IBS)とは、大腸に炎症や腫瘍などの病変が確認されないにも関わらず、便秘や下痢症状など腹部の異常を長期間繰り返す病気です。特に女性に多く見られる傾向があります。
    過敏性腸症候群(IBS)は命の危険を伴う重篤な病気ではありませんが、長期間便秘や下痢症状が続くことで日常生活に支障をきたす恐れがあるため、注意が必要です。

    10人に1人は
    過敏性腸症候群を発症

    現在日本では10人に1人が過敏性腸症候群(IBS)を発症しているという報告もあり、決して珍しい病気ではありません。


    過敏性腸症候群の原因

    過敏性腸症候群の原因過敏性腸症候群(IBS)の原因は明らかになってはいませんが、過度なストレスの蓄積や細菌・ウイルス感染などによって腸の働きが低下するためと考えられています。腸には、食べた物を消化・吸収したり不要なものを便として排出する役割があります。これらの働きは、腸の蠕動運動や知覚機能によって行われます。しかし、過度なストレスの蓄積などによって腸の収縮が激しくなると、腸が知覚過敏を起こして腹部に痛みが生じるようになります。この状態が進行すると、過敏性腸症候群(IBS)となります。

    過敏性腸症候群は
    自律神経が関与

    過敏性腸症候群は自律神経が関与腸の蠕動運動は自律神経によって管理されています。しかし、過度にストレスを蓄積すると、自律神経が乱れて蠕動運動の働きを阻害するようになります。蠕動運動の働きが低下すると、食べ物の種類や食べ方によっては知覚過敏を引き起こし、腹痛や便秘・下痢症状を誘発するようになります。
    また、自律神経の乱れ以外にも、細菌・ウイルス感染が過敏性腸症候群(IBS)の原因になることがあります。細菌・ウイルスに感染することで腸に軽度の炎症が生じると、腸粘膜の働きが低下して過敏性腸症候群(IBS)を引き起こすと考えられています。

    過敏性腸症候群に
    なりやすい人の特徴

    前述通り、過敏性腸症候群(IBS)の原因はストレスの蓄積などによる大腸・小腸など消化管の運動機能の低下や知覚過敏であると考えられています。そのため、過敏性腸症候群(IBS)は仕事等でストレスを溜め込みやすい20~40歳代の若年層に多く見られる傾向があります。


    過敏性腸症候群の分類

    過敏性腸症候群は、便の形状や排便頻度などによって以下の4つのタイプに分類され、タイプによって症状が異なります。特に混合型は、便秘や下痢症状を交互に繰り返す特徴があります。また、4つのタイプのいずれにしても、過度のストレスを蓄積すると症状が悪化するという共通点もあります。

    タイプ 便の特徴
    便秘型
    • 小さい塊や木の実のような形状の硬い
    • 小さい塊の便が融合したソーセージ状の硬い便
    下痢型
    • 不定形状で辺縁不整の崩れている便
    • 固形物を含まない水分を多く含んだ便
    混合型
    • 便秘型と下痢型を交互に繰り返す
    分類不能型
    • 小さい塊の辺縁が鋭く切れた軟便
    • 平滑で柔らかいソーセージ状の便
    • 表面に亀裂があるソーセージ状の便

    過敏性腸症候群の診断

    過敏性腸症候群の診断では、過敏性腸症候群と類似した症状が現れる他の病気(大腸がんや炎症性腸疾患など)の可能性を調べます。腹痛や便秘・下痢症状以外にも、発熱や血便、体重減少などの症状が見られる場合や年齢が40歳以上の場合、ご家族に過敏性腸症候群の罹患歴がいる場合には、大腸カメラ検査、必要に応じて腹部超音波検査を実施します。
    また、過敏性腸症候群は糖尿病性神経障害や甲状腺機能異常症、寄生虫による病気などが原因のケースもあるため、血液検査や便検査、尿検査を実施します。これら検査によって炎症や貧血などの症状が見られたら消化器系の異常の可能性があるため、大腸カメラ検査や大腸造影検査を実施して更に詳しく調べます。
    その他では、消化器症状や生活の質、心理状態などをお伺いし、総合的な評価を行います。また、薬物療法では症状の改善が見られない場合には、追加で精密検査を実施して消化管運動の状態を調べることもあります。
    なお、過敏性腸症候群の診断基準は、一般的に以下のローマⅣ基準が採用されています。

    過敏性腸症候群の診断基準
    (ローマⅣ基準)

    過敏性腸症候群の診断では、主にローマⅣ基準が採用されています。ローマⅣ基準の具体的な内容は以下となります。これらの基準を満たしている場合、過敏性腸症候群の可能性が高いとされます。

    • 繰り返し起きる腹痛が、少なくとも診断の6ヶ月以上前に現れている。
    • 繰り返し起きる腹痛が、最近3ヶ月間で平均週1日見られる。
    • 次の3つの項目うち2つ以上の基準を満たす。
      1. 排便に関連する
      2. 排便頻度の変化を伴う
      3. 便形状(外観)の変化を伴う

    過敏性腸症候群の治療

    過敏性腸症候群の治療では、まず生活習慣の改善指導を行います。具体的には、過食や過度な飲酒を控える、脂肪分の多い食事を避ける、刺激物の多い食事を避ける、夜中の大食を避けるなどの食事習慣の改善や、十分に睡眠時間を確保する、適度に休養を取るなどの指導を行います。
    これら生活習慣の見直しを行なっても症状の改善が見られない場合には、薬物療法による治療が検討されます。使用する薬は、腸の蠕動運動を調整する薬や便の状態を調整する薬、プロバイオティクス(体に有用な菌を注入する薬)などが適用されます。また、タイプが便秘型の場合には便を柔らかくする薬を、タイプが下痢型の場合には腸の働きを整える薬を使用します。

    食事療法と運動療法

    食事療法では、脂質の多い食事や炭水化物、香辛料・アルコール・コーヒーなどの刺激物の摂取を控えることが大切です。一方、味噌やヨーグルトなどの発酵食品は症状の緩和に有効です。積極的に摂取するようにしましょう。また、タイプが便秘型の場合は、便通を良くするために食物繊維を多く含んだ食品を摂取するようにしましょう。
    また、食事療法とともに重要なのが適度な運動です。日常生活に適度な運動習慣を取り入れることで、症状を改善させる効果が期待できます。
    これら食事療法や運動療法を行なっても十分に症状が改善しない場合には、心理療法を実施することがあります。ストレスコントロールやリラクゼーションなどの心理療法は、過敏性腸症候群の治療に効果的です。

    過敏性腸症候群の
    傾向・注意点

    過敏性腸症候群は一般的に若年層に多く見られる傾向があり、加齢とともに発症率は低下していきます。また、症状も、加齢とともに緩和されていきます。
    一方、過敏性腸症候群は加齢とともにタイプが変化したり、進行すると逆流性食道炎や機能性ディスペプシアを合併したり、潰瘍性大腸炎やクローン病を引き起こす恐れもあるため、注意が必要です。


    受験ストレスによる
    過敏性腸症候群

    受験ストレスによる過敏性腸症候群過敏性腸症候群の原因として、心理的ストレスが関与している場合があります。特に近年、受験シーズンに胃炎や下痢、便秘などの症状を訴える高校生の患者が増加傾向にあります。受験勉強のストレスによって自律神経が乱れ、胃腸の働きが低下すると、腸内にガスが溜まり、様々な症状を引き起こします。このような状態は過敏性腸症候群が原因である可能性があるため、注意が必要です。

    「受験上の配慮」の利用

    受験生で過敏性腸症候群を発症した場合には、「受験上の配慮」を積極的に利用しましょう。これは、病気や怪我などによって通常の受験が困難な受験生を対象に設けられた制度で、申請すると受験時にトイレの行きやすい出入り口付近の座席への変更や、別室への変更が可能になります。現在、多くの大学で実施されている制度となります。
    「受験上の配慮」を利用するには、事前に志望大学に申請し、認可を受ける必要があります。認可を受けるには、医師による診断書が必要になる場合が多いため、あらかじめ志望大学の願書やホームページを確認しておきましょう。
    当院でも「受験上の配慮」を申請するための申請書の作成は可能ですので、ご希望の際にはぜひご利用ください。